最近、読んだ『正社員が没落する ――「貧困スパイラル」を止めろ!』 (角川新書)で初めて知った「溜め」という概念。
「余裕」や「豊かさ」のようなものでしょうか。
この本は、『反貧困』の著者である湯浅誠さんと、『ルポ 貧困大国アメリカ』 の著者である堤 未果さんとの共著で、「中流の貧困化」について語られています。
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一昔前は、貧困問題は最下層の特別な人たちの問題でした。
それが、今ヒタヒタと中間層の人たちへ波及しているというのです。
湯浅さんは、「溜め」についてこんなふうにインタビューで答えています。
「溜め」というのは、ため池の「溜め」、あの字ですね。
私が「溜め」という言葉で表現したかったものは、自分を包んでくれている「クッション」みたいなものだと思ってくれればいいです。
それは目には見えないけど、実は、誰にも自分を包んでくれるクッションがあって、ただそれは、クッションの大きい人と小さい人がいるんだということなんですね。
このクッションが小さいと、何かトラブルがあると衝撃をまともに受けてしまう。
つまり、貧困化とはお金や、人間関係、それに自信に繋がる精神的な「溜め」がない状態であり、この小さくなった「溜め」を周りで大きくするよう温かく見守っていくことが必要だと湯浅さんは言っています。
・貯金などの金銭的な「溜め」があれば、解雇されても次の就職先を探す時間を稼げる。
・親や兄弟、友人のような人間関係の「溜め」があれば、次の職を得るまでそれに依存もできる。
・自分に自信をもつという精神的な「溜め」があれば、不遇を耐えることができる。?
伴侶や家族は、まさに人を包んでくれる大事なクッション=「溜め」なんですよね。
?家族、地域、会社など人間関係が希薄化している昨今、簡単に貧困層に転げ落ちてしまう危うさに改めて気づかされます。
堤 未果さんの『ルポ 貧困大国アメリカ』も衝撃的な本でした。でもそれはリーマンショック以前の話。その後アメリカはどうなっているか?と続編の『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』を読んで、にわかには信じられないほど仰天。
私の娘がアメリカで生活しているので、かの国での医療費の高さやリーマンショック以降の経済の落ち込みなどアメリカのかかえている困難さや混乱を多少は知っているつもりでしたが……
これほどまで「中流の貧困化」が押し寄せているとは!!
日米どちらの貧困問題も 個人ではどうにもならないことも多くて重い気持ちになりますが、
せめて自分のクッションを幾分かでもふんわかできるよう、
人との関わりを大事にしていきたいですね。
(三沢)